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どんな日々を過ごそうと

夜の後には朝が来る

それは命も同じことで

死の後には生が続く

 

長い長い夜のあと

明く染った空をみて 続いたは感じるのだ

 

日が昇る  と

​つぎあうときは

花が咲き芽は上を向く季節

さなぎからヒトへと羽化し

色のない日々を過ごしていたわたしは

”たべもの”として生きてきた

仕方がない

いのちを食べて生きるから生きものなのだ

そう分かっていても  あの目がいやだった

今なら分かるわ  あれが 怖い だったって

分からない音と 知らない場所に 置いて行かれること何度

月を吹き抜けた風が気持ちの良い夜に

あたたかくて  やさしい目に出会った

一日目  あなたはたべものをくれた

口に入れるのは怖くて がまんしたの

今思えば 心配させちゃったかしら

 

二日目 あなたはふしぎをくれた

気持ちを伝えようと お顔がころころ変わるあなたが気になった

言の葉が分からなくて もどかしかったのを覚えているわ

 

三日目 あなたは音をくれた

なんだか気に入って 心のなか 口を動かして 何度も真似をしてみた

それから好きな音のひとつが  あなたの名前

 

五日目 あなたは花をくれた

ゆっくりと差し出された まあるい香り

やさしい  あたたかい  おいしい

うれしかったの

わたし 人でいていいのかしら

なみだがとまらなかった

 

七日目 あなたは名前をくれた

”たべもの”のわたしに 何度もくりかえす声がうれしそうで

たくさん悩んでくれたのでしょう

なんとなく分かったわ  あなたからのおくり物だって

胸のなかがぽかぽかしたから

 

 

十日目 あなたは手を引いてくれた

久しぶりに見たあの目から逃げようと

大きな手のひらがわたしの手を引いて 飛び出した

早く走れなくて 息が上手に吸えなくても

色彩やかな景色がとってもきれいで

あなたがいれば大丈夫だって わくわくしたの

 

 

それからの世界は彩やかで

日々にたくさんの色と言の葉がついた

うれしいこともつらいことも おいしいものも全部全部半分こ

うれしいことは あなたいつも わたしに少し多くくれた気がする

おいしいものはあげたから おあいこね

 

でも 日が昇れば夜はくるもの

 

ひらひらと花に吸い寄せられる

山の中に 大きな大きな花が咲いていれば

怖いくらいきれいなそれに  気がついたら

 

 

 

その日から少しずつ お花の蜜が飲みたくなって

大好きなごはんが おいしく感じられない日が続き

いつの間にか お花しか食べられなくなっていた

 

気がついたあなたは わたしより辛そうで

 

ああ わたし わるいひとね

あなたがそんな顔をしてくれるのが

 

どうしようもなく うれしいの

 

 

 

 

 

ねえ  かずいちさん

いまごろ どんなかおをしているのかしら

さびしいおもいを させているかしら

もうわたしには わからないけれど

できれば いつもみたいに わらっていてほしいわ

 

わたし あなたにあえて とってもしあわせでした

でもね ありがとうも そばにいたいのも たりないの

 

だからね、つぎあうときは──────

 

 

 

 

 

「お前さん、本当にこの花が好きだよなぁ」

「…ん?え 俺に?」

「はは、…ありがとさん

 

……なあ お前さんも

あの時 こんな気持ちだったのか」

 

 

 

つぎあうときは

わたしから  おはなをおくらせてね

【登場人物】

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